二・二六

帝国陸軍によるクーデターを鎮めたのは武力ではなく、一本のアドバルーンだった。
そこに記された文言は青年将校たちの激情よりも兵達の銃火器よりも強い力を有していたのだ。
2600年の暦を柱とする日本民族にしか感じ取れない、抗えぬ力。
嘗ての日本人は見えざる"Force"に統べ括られていた。

いまの日本にそれは無い。
だから「戦争の出来る国」になっても過去と同じにはならないのだ。
抗えぬ理由が存在しないのだから、巨像は思い通りに動きはしない。
危機を察知したら鼻を動かせるようになるだけである。

赤信号で停止するのは正しい。しかしそこへ暴走車が突っ込んで来ても接触しない限り動くことも許されないなんてバカげているとしか言い様がない。
そして日本列島はひよっこりひょうたん島ではないのだ。