クルマ好き

俺の家にはクルマが無かった。親父は運転免許も持ってなかった。
でも俺は物心ついたときからクルマが好きだった。
おもちゃ箱にはいくつものミニカー。プラモ屋に行けばショーウインドウのホンダF1やフェラーリ312Bに釘付け。
タミヤCB750は憧れのプラモだった(これはバイクだが)。
時代は排出ガス規制前夜。TE27レビン・トレノ、セリカ、ブルーバードSSS、サニー、スカイライン、ランサー、サバンナRX-3。その名を聞くだけで血が滾るようなクルマ達の群雄割拠だった。
しかし俺の心を捉えたのはシビックRS。HONDAはN360の頃から特別な存在だった。
スーパーカー・ブームは当然の如く洗礼を受けた。でもその頃に「いつかは欲しい」と思っていたのはS800だった中学生。

俺にとってクルマとは何の象徴だったんだろう。
日々、同じ場所に居る事を是としない衝動が俺にはある。
いつも、違う景色を見たいと思う俺がいる。
留まっていたくない。人生背景動画。Life is on the road.
理屈は無い。人は根を下ろすものという通念あればこその、旅への渇望。二律背反。

欲しかったクルマはエスハチ以外は乗って来た。
いいんじゃないかな、そんな化石燃料の終焉時代に生きられて。